高脂血症のための運動療法

高脂血症によいとされる運動は「有酸素運動」です。
この有酸素運動の効果として次のようなものが考えられます。

  1. HDLコレステロールの増加

  2. トリグリセライドの低下

  3. 糖尿病・高血圧の改善

  4. 呼吸・循環機能の強化

  5. 減量

  6. ストレス解消

有酸素運動は脂質に好影響を及ぼすのに対し、「無酸素運動」は主として糖質がエネルギー源となるため直接的な効果は期待できませんが、筋肉量を増加させることで次のような健康に良い効果があります。

  1. 基礎代謝量・熱産生量の向上

  2. 老化に伴う筋肉量減少の予防

  3. 冷え性・脂肪蓄積・疼痛(腰痛・膝痛など)の予防


「有酸素運動」と「無酸素運動」の違いを、
筋収縮のエネルギーという観点から説明します。(図1参照)

筋収縮のエネルギーはアデノシン3リン酸(ATP)がアデノシン2リン酸(ADP)とリン(Pi)に分解される反応によって得られます。

ATP ⇒ ADP + Pi + エネルギー

しかし、筋中に貯蔵されているATPは少なく、体内で再合成しなければ運動を持続することができません。分解されたADPとPiを再びATPにする必要があるのです。

ADP + Pi + エネルギー ⇒ ATP

このATPを再合成するために必要なPiとエネルギーを供給する機構に酸素を使うものと使わないものがあるのです。

① 無酸素運動 (無酸素性エネルギー供給機構)

非乳酸性機構(ATP-CP系)⇒ ハイパワー

筋中にあるクレアチンリン酸(CP)がクレアチン(Cr)に分解されることで、Piとエネルギーが供給されます。

運動持続時間は約10秒。(筋中のCPは枯渇するため。)

乳酸性機構(解糖系)⇒ ミドルパワー

筋中のグリコーゲンがピルビン酸に分解(解糖)されることでPiとエネルギーが供給されます。

酸素の補給がなければピルビン酸は最終的に疲労物質である乳酸として筋中に蓄積されます。乳酸が一定量以上となるとグリコーゲンの分解は抑制され、筋肉は収縮できなくなります。

運動持続時間は約40秒。

② 有酸素運動 (有酸素性エネルギー供給機構)⇒ ローパワー

乳酸性機構と同じくグリコーゲンはピルビン酸に分解されるが、その後乳酸へと反応は進まず、TCA回路と呼ばれる化学反応の連鎖環に入り、酸素を使ってATPを多量に再合成し、最終的には水と炭酸ガスに分解される。

疲労物質の蓄積はなく、糖質と酸素の供給が続く限り運動の持続が可能です。

運動強度が低い場合や糖質が枯渇してくると、タンパク質や脂質も動員されます。

それでは、実際の運動に関して説明します。

有酸素運動を行うということは、筋中に乳酸が蓄積しない程度の低負荷の運動をある程度の時間持続して行うということです。

では、どの程度の運動をどの位の時間やればいいのか、ということですが、運動能力には個人差がありますので一概にはいえません。

目安としては、最高にきつい(これ以上はもう不可能)運動を100%とした場合、40~60%程度の運動を30分以上行うのが良いとされています。

最初は30~40%の運動を10分程度から始め、1~2週間かけて様子を見ながら徐々に増やしていくといいでしょう。

この運動の強さを決める方法を紹介します。


  1. 最高にきつい運動時の心拍数を最大心拍数として、脈拍がその何%かで決める。この場合まず自分の最大心拍数を求めます。そして、最大心拍数の40~60%の心拍数を目安として下さい。

    〔最大心拍数〕 = 220 - 〔年齢〕

    例) 40歳の人が50%の運動をする場合は、心拍数が90/分を目安に運動。

    (220 - 40) × 0.5 = 90

  2. 自覚症状から決める場合は、

    自覚的運動強度(rating of perceived exertion,PPE、ボルグスケール)を用いて決める。

    上下の記の表の通り自分で楽だと感じる範囲の運動強度です。
    (表1.表2参照)


具体的な運動の種類としては、
① 歩行 ② ジョギング ③ 水中歩行 ④ 水泳 ⑤ 縄跳び ⑥ サイクリング ⑦ エアロビクス等 があります。

なかでも歩行はいつでも、どこでも、一人でも、簡単に、また比較的安全に行えるため歩行から運動を開始するのがよいでしょう。

また、運動する場合の注意点として、

  1. 動悸・息切れ・めまい・胸痛・関節痛などの自覚症状がないこと。

  2. 内臓疾患(とくに心臓病)や骨関節疾患がないこと。

  3. 高脂血症・糖尿病・高血圧症が軽度であること。

  4. 空腹時や食直後は避け、食後1~2時間に行うのがよい。

運動療法の目的は必ずしも毎回の運動で直接糖質や脂質を分解することではありません。

長期的な運動で筋肉量や筋肉内を流れる血液量を増やし、またその他全身の細胞を活性化することでエネルギー消費を円滑にすることが目的です。

この意味でも、無理のない範囲で行い、運動を継続することを心掛けて下さい。